私が住んでいた地域はいわゆる観光地でした。標高の高い地域だったので、夏は避暑地、冬はスキーヤーたちが訪れるというレジャーを楽しむには理想的な環境です。
そのため農業のかたわら旅館やペンションを経営している地元の方が多くおられました。夏は主に農業を営み、冬は宿泊施設の経営をするといったぐあいです。
観光で夏に都市部から遊びに来た友人たちが「都会はヒートアイランドだというのに、夏にクーラーが必要ないなんてうらやましい!」としきりに言っていたのを思い出します。
冬にスキーをしに来た友人たちからは「家からスキー場まで30分もかからないなんてうらやましい。」とも言われました。
楽しみの裏側と四季の味わい
確かに田舎には都市部では味わえない四季を実感できます。
それでも、観光で来た場合には冬の寒さがどれほど厳しいのか、冬の雪かきがどれほど大変なのか、うっかり水道管の電熱線を付け忘れて水道管を破裂させてしまった時の大変さがどんなものなのか、きっと想像もつかないと思います。
毎年地元の人たちがそういう経験して冬を乗り越えて田舎での暮らしを営んでいるというのは、まさに観光地の舞台裏です。
私も田舎暮らしをする前は同様でした。でも一年を通して田舎での暮らしを経験して冬の大変さも味わったからこそ、田舎の遅い春がどれほど待ち遠しく、またどれほど感動的なのかを実感することができたのだと思います。
それぞれの季節にそれぞれの良さがあります。春には何と言っても山菜採りの楽しみがあります。木々の新芽の淡い黄緑色つまり萌黄色の何とも言えない美しさにはうっとりさせられます。ウグイスを始め野鳥たちの美しい求愛のさえずりには心が癒されます。
梅も桜も桃もほぼ同じ時期に一斉に開花し春の訪れを実感します。初夏にかけて木々が除々に鮮やかな緑色に変わっていく変化には自然の生命力を感じます。秋にはキノコ採り、栗やクルミなどの木の実の収穫の楽しみがあります。山全体が紅葉するそのドラマチックな迫力には圧倒されます。雪化粧した山々の美しさには思わす感嘆の声をあげたくなります。
言葉では形容しきれないですが、こんな感じで季節の移り変わりを目の当たりにし、耳にし、肌で感じ、臭いで感じ、口で味わい、まさに五感で感じることができるのです。
田舎暮らしを経験すると、自然の厳しさも経験しますが、それに勝る季節の微妙な変化を楽しめるのです。